東北大学 地球惑星物質科学教室

分野の研究紹介

隕石から読み解く太陽系の歴史

空からやってくる隕石の多くには、約45億年前の太陽系創世の物語が凝縮されています。太陽系星雲がどのような歴史をたどった現在の太陽系に進化したのか,太陽系の惑星がどのようにできたのか,できたばかりの惑星の様子はどのようなものだったのかなど,様々な物語が秘められているのです。顕微鏡や最新の分析装置を用いて隕石を詳しく調べることにより、その物語を解読できるのです。

また,隕石には様々な種類があり,それぞれが違った来歴をもっています。中には火星や月からやって来た隕石もあり,それらの星の歴史をそこから読み取ることもできるのです。


岩石から読み解く地球の秘密

地球には様々な岩石があります。岩石は,人間や生き物と同様,一つとして同じものはなく,それぞれが違った個性をもっています。その岩石が辿ってきた歴史や,その岩石の性格など,一つ一つ違っているのです。河原,山,海岸,いろいろな場所に岩石はあります。熟練した科学者ならば,その岩石を手に取っただけでも,かなりの程度,その岩石の歴史や性格を見抜くことができます。岩石を研究室に持ち帰り,顕微鏡で観察したり,最新分析装置で調べることにより,現地ではわからないことも詳しく知ることができます。たくさんの岩石の歴史や性格を知ることで,地球全体の様々な歴史・特性を解読しているのです。

私たちは世界中の様々な岩石を調べています。これにより、地球内部(地殻、マントル)や海洋の大きな動きをとらえることができます。中国やモンゴルの岩石を調べたところ、現在火山の認められない地域でも、かつては地殻・マントルの大きな動きによって大規模な火山活動があったことがあったことが分かりました。現在は大陸の真ん中にあるモンゴルには,かつては海の底の岩盤をなしていた岩石が見つかっています。また、鮫の化石中に微量に含まれる元素(Srの同位体)を丹念に測定することにより、海洋を取り巻く環境が、長い間にどのように変遷したかを知る試みも行っています。


火山を知り,火山災害の軽減へ

私たちのグループが最も得意とするのは,火山でできた岩石を調べ,その火山の様々な秘密を読み解くことです。火山の下にはマグマがあります。そのマグマが地表に現れることで火山の噴火が起きるのです。マグマが地下でゆっくり冷えて固まったのが深成岩、地表で急激に冷え固まったものが火山岩です。深成岩や火山岩の顕微鏡観察や化学分析により、マグマの物語が読み取られるのです。たとえば、マグマがいつどこでどのようにして生まれたのか、どのようにして地下深くから浅いところに昇ってきたのか、どのように変化していったのかなど、様々なことが分かるのです。また、火山でマグマと一緒に放出された地下の岩石を調べることで、マグマとその周辺岩石との相互作用なども分かります。また、深成岩や火山岩がいったいいつできたのか、その年代も放射性同位体分析という方法によって明らかにされています。

最近は,火山をより詳しく知るために,岩石だけではなく,その周辺に湧出する温泉や,噴火で放出された細かい火山灰なども調べています。さらに,協力講座の火山科学分野との連携により,噴火の再現実験なども行っています。様々な方法を融合することによって,火山をより良く理解し,そして将来への火山噴火災害の軽減を目指しています。


地震予知への新たなる挑戦

私たちがこれまで培った地球化学的な研究方法は,地震予知にも役立つ可能性があります。特に,地震発生前後における地下水の化学組成変化に注目しています。地震が発生する前の地下応力状態の変化に応じ、地下水系にも変化が生じ,その結果として化学的特徴が変化するのです。継続的に地下水の化学組成変化を調べ,地震前後の化学的変化をキャッチし,地震予知の可能性を探っています。


環境問題への取り組み

 先代,先々代のスタッフから引き継がれ,本研究室には数十年にわたる長い歴史があります。これまでは一貫して純粋に惑星・地球を調べて真実を明らかにしようという理学的な研究方法を主に行ってきました。近年,次第に火山災害や地震予知など,地球科学と人間社会が深く関わる領域の研究も行うようになり,最近ではより一層,社会との関わりを重要視しています。私たちの研究グループでは,最近数年間にわたり,環境問題に関する研究を推し進めています。とりわけ地層・土壌・水の中に存在する有害元素に関する基礎研究を重点的に行っています。どのように土壌・地層・水中に有害元素が分布しているのかを調査したり,どのようにしてそれらが濃集するのか,原因やプロセスを調べています。さらに,土壌や水中に存在するヒ素等の有害元素を,どのようにすれば除去できるかについての実験研究をも行っています。また,近年問題になっているアスベストの除去・被害軽減に関しても,民間企業と連携しながら研究に取り組んでいます。